㉖ 大柄と小柄、どちらが有利?……下降の場合。

登りでは登坂抵抗が発生し、その大きさは(人+自転車)の重量に比例して増減しますから、下りではこれが自転車を引っ張る力になり、重いほどスピードが出ると思い勝ちです。でも、430年ほどの昔にガリレオ・ガリレイがピサの斜塔から大小2つの金属の玉を落として落下速度に違いがないことを実証しており、重いから速いとはなりません。とはいっても、自転車の走行には空気抵抗が発生するために、その影響が現れます。
そこで前項にも出てきた
A:身長160cm・体重52kg・前面面積0.28m2・自転車7.7kgC:身長190cm・体重87kg・前面面積0.4m2・自転車8.3kg
の運動エネルギーと空気抵抗を比べてみます。
→運動エネルギー=(重量×速度2)÷2
Cの自転車込み重量はAの1.6倍ですから、AとCが同じ速度なら、Cの運動エネルギーは常にAの1.6倍になります。
→空気抵抗=空気抵抗係数×(空気密度×速度2)÷2×前面面積
Cの前面面積はAの1.43倍ですから、AとCが同じ速度なら、Cの空気抵抗は常にAの1.43倍になります。
そこで、ペダルをこがずに坂を下る場合です。
Cの空気抵抗が運動エネルギーと同様に常にAの1.6倍なら、
空気抵抗による減速度もA・C同じになるため、AとCの速度は

運動エネルギー グラフ速度変化にともなうAとCの運動エネルギーと空気抵抗の変化。40km/hでのAの運動エネルギーと空気抵抗をともに100%とした場合。

同じになります。しかし、Cの空気抵抗はAの1.43倍で、運動エネルギーの1.6倍よりも倍数が小さいために、空気抵抗による影響の度合いはCのほうがAよりも小さくなり、その結果、Cの速度のほうがAの速度よりも速くなります。したがって、直線的に下る速さだけを考えれば、大柄なほうが有利になります。

go to indexfoward pagenext page