⑯ 自転車のBB下がりと合成重心の高さ。

(F1)はダイアモンド型フレームの元祖:1885年のローヴァー・セーフティと、1903年の第1回ツールの優勝者モーリス・ギャランのレーサーです。両車に共通しているのはBB下がりがあることで、ローヴァーは前輪よりも後輪の径が少し小さいものの、BBが後輪シャフトの中心よりも下にありますし、前後輪同径のギャランのレーサーのBBは、前後輪のシャフトの中心を結んだ水平線よりもやはり低く設定されています。要するに、110年、さらには130年以上の昔につくられた自転車にも、今の自転車と同様にBB下がりが設けられていたということです。

Rover-and-Tour-1903

BB下がりと自転車の走行特性の関係についてはいろいろと論議がなされていますが、BB下がりを設けた最初の理由は、セーフティという名前が示すように、サドルにまたがった状態で足が地面につくようにするためだったとしても間違いではないでしょう。そして、これが現在まで続いてきたのは、そうした自転車で走って何ら問題が無く、というよりも、むしろ具合がよかったから、というのが自然な見方ではないでしょうか。

ロードレーサーの標準的なBB下がり70mm付近の場合、前傾姿勢をとった乗り手と自転車の合成重心の高さは、その自転車のサイズにふさわしい男性が立った時の重心の高さ:身長の54~56%あたりになります(F2)。これは、日常行動での「重心の高さ感覚」で自転車をあやつることが出来るということで、「未体験の重心の高さ」への慣れを必要としないことを意味しています。

人体重心

100年あまりの昔と比べると、ホイールベースは15cmから20cm短くなり、シートアングルとヘッドアングルは4゜ほど大きくなっている今のロードレーサーですが、合成重心の高さにはほとんど変化がないと見てもよいようです。

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