登りの走行では乗り手と自転車の合計重量に勾配分を掛けたものが登坂抵抗になるために、大柄な選手は不利と言われています。ところが身長188cmで体重が80kgもあったツール5勝のミゲール・インドゥラインは、ヒルクライマーのクラウディオ・キャプーチを寄せ付けない登りの強さを発揮しました。
そこで前項の160cm:A、175cm:B、190cm:Cの3人について考えて見ます。ロードですから、自転車の重量を、A:7.7kg、B:8.0kg、C:8.3kg、転がり抵抗係数を0.005とします。
そこで、このA:378W、B:480W、C:599Wで平坦路を走ったときの速度を計算すると、
A:13.5m/sec(48.6km/h)
B:13.7m/sec(49.3km/h)
C:14.0m/sec(50.4km/h)
となり、平坦路ではAはBよりも0.7km/h、Cよりも1.8km/h遅くても、10%の坂を同じ速さで登れることを示しています。
勾配:10%、速度:20km/h(5.6m/sec)での登坂抵抗、転がり抵抗、空気抵抗の全てを含んだ出力は、
A:378W
B:480W
C:599W
したがって体重1kあたりの出力は、A:7.27W/kg
B:7.06W/kg
C:6.89W/kg
となり、登坂でも大柄なほうが有利では?と思うかもしれません。
というわけで、世に言われている通り、登りは小柄なほうがやはり有利になります。ただし、これはあくまで計算による結論ですし、サイクリストの能力発揮の特徴とは無関係です。
大柄なインドゥラインが登りにも強かったのは、アワーレコード樹立に見られるように有酸素域の出力が圧倒的に大きかったことと、ダンシングはめったにせず、終始シッティングで登る回転型の選手だったからかもしれません。