局率半径と旋回速度の関係は時に命にかかわる(?)問題ですので、触れておきます。
車輪のキャンバーアングル(内傾角)の限界はタイヤ接地部に発生する摩擦力によって決まりますが、タイヤの質、空気圧、路面条件によって異なります。規定の空気圧のロードタイヤの場合、整備されたコンクリート路面でのキャンバーアングルの限界は34゜~35゜とみられ、曲率半径と限界速度を示したものが表のC欄です。
この表から解るのは、曲率半径の増大率よりも限界速度の増大率のほうが小さいことで、曲率半径20mφは8mφの2.5倍ですが、限界速度は1.6倍弱にしかなりません。また、アスファルト路面では発生する摩擦力がコンクリート路面の85%程度のため、可能なキャンバーアングルが小さくなり、表のA欄のように限界速度が8%ほど遅くなります。
次にコーナーでのラインどりと限界速度についてで、幅:8m、曲率半径:11mφの90゜コーナーがあったとします。この道路の側端から1mのところを
アウト・アウト・アウトで走った場合と、アウト・イン・アウトで走った場合を比べてみると、アウト・アウト・アウトでの曲率半径は14mφ、アウト・イン・アウトでの曲率半径は29mφになり、限界速度は前者の34.9km/hに対して後者は50.2km/hにもなります。しかも、前者は旋回距離が長く、不利がダブルになります。一方、180゜旋回ではアウト・アウト・アウトでも、アウト・イン・アウトでも曲率半径は同じですから限界速度は変わりませんが、前者には「遠回り」というデメリットが生じます。
左は1985年ツールTTのアスファルト路面でのベルナール・イノーのシルエット。キャンバーアングルは限界値の30゜。さすがです。