この2台の自転車の左は、1885年にイギリスのスターレーが発表したダイアモンドフレームの元祖ローヴァー。右は、その4年後にベルギーの鍛冶屋がつくったシャフトドライヴの自転車です。
駆動方式の違いもさることながら、その大きな違いはフォークオフセットの有無です。1800年代終盤の自転車のフロントフォークは、垂直だったり、オフセットが有ったり無かったり、様々でした。しかし、1903年の第1回ツール・ド・フランスの自転車のフロントフォークは全て垂直ではなくなり、前輪はオフセットされています。これは実走を伴った多くの試行錯誤の末にそうなったのでしょう。
SAMSONの場合、ヘッドアングル73゜のロードレーサーでは、
直進性と運動性が良好なバランスを示すフォークオフセットの範囲を43mm~45mmとしています。しかし、こうした数値が先に存在していたわけではありません。人間の感覚が良しとしたハン
ドリング特性における数値が結果としてそうなっているから、それを採用しているのです。何10年も昔のロードレーサーのヘッドアングルは今よりも小さく、それに呼応してオフセットが大きくとられていました。また、自転車の用途が変わると、それに適合した操縦感によって新たな数値が見つけ出されます。
数値は、乗り手、すなわち人間の感覚の要求に応えることで得られた結果なのです。
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