このボール紙細工は、旋回中の自転車の前輪と後輪の位置関係を示したもので、前輪は常に外、後輪は常に内にあります。
同じジオメトリーの自転車でも旋回半径が変わると前輪と後輪の軌跡の間隔も変わり、半径が大きくなるほど間隔は狭くなります。〔半径が無限大の円=直進=軌跡の間隔:0〕〔半径が最小の円=後輪接地点を中心として前輪で描いた円=軌跡の
間隔:前後輪の接地点を結ぶ接地線の長さ〕と考えれば、このことが納得できるでしょう。
次ぎに異なるジオメトリーの自転車の場合は、旋回半径が同じでも、へッドアングルが大きくなるほど、ホイールベースが短かくなるほど、前輪接地荷重が大きくなるほど、前後輪の軌跡の間隔は狭くなります。
前項で旋回走行の条件を「重力と遠心力の合力の方向が接地線を通っていること」と書きましたが、合成重心の位置の左右の許容範囲は、軌跡の間隔が広いほど大きく、狭いほど小さくなりますから、軌跡の間隔は旋回中の安定や動作と関係します。
狭い軌跡の間隔を肯定的に捉えているのがスプリントレーサーで、ヘッドアングルをロードレーサーよりも大きくとり、ホイールベースも短くして、俊敏な運動性を生み出すことが行われます。
前後輪の軌跡の間隔の大小と運動性の違いの関係を知る方法に、ヘッドアングルが異なる2台の自転車によるスラローム走行があります。スラローム走行は上図のように前輪の軌跡が後輪の軌跡を横切るカタチになっているため、軌跡の間隔の違いがもたらす運動性(敏捷性)の違いを知ることができるからです。