how to order

最初に。

真に優れたものは、
経験の深さと読みの確かさから
生まれます。

自転車を走らせるエンジンは人間です。そして、このエンジンには、大きさ、形状、重さ、捻出できる力や力の捻出特性など、あらゆる面で大きな個体差があります。この個体差を完全に取り込んだフレームでなければ、エンジンの性能を無理なく、しかも充分に引き出すことができません。そのために何10年もの昔から競技選手だけでなくホビーサイクリストのあいだでも、フレームのオーダーメイドが行われてきました。
競技選手については、1960年代終盤から1970年代中盤にかけてツールとジロにそれぞれ5勝をあげたロードレース史上最大の選手エディ・メルクスの要望に応え、デ・ローザの創業者ウーゴが年間50本ものフレームをつくった話が有名です。
日本も例外ではありません。しかし日本のサイクルスポーツはイタリアのようにポピュラーではなかったために、これが逆に作り手と乗り手との密接な関係をつくり、オーダーメイドを身近なものにしました。そして、「走るもの」としての機能/性能だけでなく、パーツアッセンブルを含んだ視覚面も併せて問う趣味の世界が生まれました。
視覚面については実際に目で見て納得するしかありませんが、乗り手に適合するフレームについては、下記のように3つの条件から説明することができます。

第1の条件:サイズの適合。

その乗り手にとって適切なライディングポジション、すなわち適切なサドル高、適切なシートアングル、適切なハンドル位置が無理なく設定できることです。

第2の条件:ステアリング特性の適合。

ステアリング特性の良否は、直進性と運動性の強さのバランスによって決まります。一方が強くなると他方が弱くなり、このバランスの良否のカギを握っているのがヘッドアングルとフォークオフセットによって規定されるトレールです。
トレールの長短の許容範囲はわずか4mmですが、その範囲の中に収まっていればよいというものではありません。主たる走行シーンやヘッドアングルの大小によって、さらには乗り手のそれまでの慣れによって、許容範囲の中でトレールを長めにしたり短かめにしたりといった微調整が必要で、そこで初めて乗り手が期待するステアリング特性が得られるのです。

第3の条件:剛性の適合。

剛性の高い硬い自転車は力が逃げないために速く走れると思いがちです。しかし、ことはそう単純ではありません。クランク1周におけるペダル踏力の大きさと方向の推移には個人差がありますが、ロード走行の標準的なケイデンス90rpmの場合、踏み出しから最大ペダル踏力に至るまでの時間は約0.2秒。瞬きほどの短い時間です。したがって、いくらかの「力の逃げ」がないと踏み出し時の抵抗が大きく、スムーズなペダリングができません。踏み出しの軽さの理由、中速からスムーズに加速できる理由、上れなかった坂が上れる理由、長時間の走行でも疲労の蓄積が抑えられる理由は、この「力の逃げ」にあります。
しかもケイデンスが速くなるほどペダル踏力最小から最大までの時間が短くなるために、「力の逃げ」は必要かつシリアスなものになってきます。〔硬いフレーム→力が逃げない→高速が可能〕ではないのです。ラインロードよりもロードTT、ロードTTよりも追い抜き、追い抜きよりも1kmTT、1kmTTよりも競輪やスプリントのほうが「より適切な力の逃げ」が必要なのです。それが、競輪で言う伸びる自転車と伸びない自転車との違いを生み出すのです。

以上の3つの条件を見て分かることは、条件1と2にはとりあえず指針となる数値が存在していますが、条件3にはそうした数値が存在していないことです。そのために、オーダーメイドであっても、たとえ各部サイズやステアリング特性が乗り手の期待に合致していても、なお「走る自転車」と「走らない自転車」という違いが出てきます。
では、第3の条件を満たす「走る自転車」をつくり出すものは何でしょうか―。
それは、作り手の経験の深さと、その経験に裏打ちされた読みの確かさです。

SAMSONが自転車づくりを始めたのは39年前。つくったフレームは7,300本以上。全てが作り手と乗り手による1対1の関係で行われ、しかも、その大多数を最高度の「シリアス」が要求される競輪の自転車が占めてきました。したがってラボや研究者といった第3者からの借り物のデータではなく、きわめて厳しい世界を対象にして自分自身で確かめたSAMSONだけのデータの蓄積という土台があります。この土台が次ぎなる自転車への確かな読みを可能にし、望ましいライディングポジションはもちろん、乗り手が期待するステアリング特性をもった「走る自転車」、すなわち真のオーダーメイドと言える自転車をつくり出すことができるのです。

SAMSONを駆って樹立された1994年コロラドスプリングスにおけるワールドカップ女子3000m追い抜きでの日本記録3’47”969、1995年世界選ボゴタ大会男子1kmTTでの日本記録1’02”910を破ったスチールの自転車は日本に存在しません。

1000m time trial bicycle1000m time trial Kamiyama